バブル崩壊が契機となって急成長を遂げたのが消費者金融業界です。不況によるリストラや収入減によって生活資金に困窮した人達が消費者金融に救いを求めたのです。これらの大手金融業者は、当時積極的にテレビコマーシャルや広告に乗り出し「サラ金」のダーティーなイメージから脱却して明るく爽やかな消費者金融を印象づける戦略に出ます。しかし、幾ら明るいイメージをアピールしても、業界内で繰り返された執拗な取り立て等の不祥事は消費者金融業界への不信感をつのらせていたのです。
多重債務者の破産や自殺が増加していた2003年当時は、ヤミ金融が暗躍していた時期と重なります。2005年頃からは、大手を含む複数の金融業者に再三金融庁から業務停止命令が出されていたり、複数の大手消費者金融が融資契約者に明確な告知をしないまま生命保険に加入していた事実が明るみになっていました。次々と噴出する消費者金融問題に行政がようやく本腰で取り組み始めたのが2006年になります。
この年の臨時国会で「貸金業の規制に関する法律等の一部を改正する法律」が成立して、以降2010年6月18日の全条文の施行まで段階的に貸金業法が整備されてきたのです。出資法の上限金利の20%への引き下げ、みなし弁済の廃止、年収の1/3を超える貸し付けを禁止する総量規制、貸金業参入に必要な純資産5000万円への引き上げ、借り手の生命保険による弁済禁止、ヤミ金対策の強化等がその内容です。ただ、これによる過払い金返還訴訟は決して円滑に進行していません。業者によっては、返還以前に倒産してしまったケースもあるのです。延々と利息を払い続けてきた債務者の中には、督促状が届かなくなった事に安堵して、取り戻せる筈の過払い利息を他人事のように思っている人もいるそうです。幾つかの弁護士事務所はテレビコマーシャルを使ってでも、この過払い訴訟を請けようとしています。
金融業界の再編や縮小もありましたが、取り合えず消費者に関連したトラブルが伝えられていないのが法改正のメリットなのかも知れません。落ち着きを取り戻した消費者金融業界のようにも思えますが、この問題を最初に国会で取り上げた2006年から全条文の施行まで5年の長きを要しています。この間も忌まわしいグレーゾーン金利は存在していて、一部では強引な取り立ては継続していたのです。そして、この5年間に債務を苦にして自殺した人も少なくありません。溺れそうになっている人を前にして、政府は延々と救助方法を相談していた事になるのです。